Wrangler Prototype11MJ(1940's)
ラングラーが最初に販売したデニムジャケット11MJの中でも最も最初期タイプがこのプロト11MJ。
こちらもプロトと呼ばれるように1990年代のビンテージブームの際に発見された逸品で、それまではその存在は認知されていなかった。
基本的なデザインはビンテージラングラーらしい従来の11MJ、111MJ等のファーストと呼ばれるジャケットとほぼ同じだが従来の11MJとは微妙にディティールが異なり、それらファーストよりも古いジャケットでラングラーでは最古参にして最初のジャケット、G−ジャンにあたる。
誕生は1948年とされ、ラングラーブランド開始翌年であり、11MWに初めてサイレントWが施されたと同時期に登場した。
この1940年代末のジーンズ、G−ジャンは誕生初期故の試行錯誤か毎年(あるいはもっと短いサイクルで)微妙なモデルチェンジをしていたようで最終的に1950年には一般的に知られている11MJへとなる。
その為その短期間においてプロト11MJと従来の11MJとの過渡期モデルが複数種類存在しそれらも同様に非常に希少なビンテージデニムとなっている。

兎に角ラングラーの歴史を語る上では重要な超レアモデルだが生産期間は短く現存数も少ないだけに一般的な古着屋では先ず見られず、その存在を知らない古着屋も多い。
だがそれ故に過去1990年代の復刻ブームの際にはラングラー日本法人、国産レプリカブランドにおいて復刻、レプリカがこぞって多数販売されており、皮肉にもレプリカデニムの中では比較的メジャーな存在となっている一面もある。
ただしそれらの多くは実物を参考に作られていない物も多く忠実さと云う意味では疑問符の付く商品が多かったのも過去の事実だ。
胸ポケット。
左右二箇所に配置された縦長のポケットでラングラーを象徴する飾りステッチ、サイレントWが施されているがサイレントWが縦長で中央の山がフラップにまで近づいている。
プロト11MJのバックポケットの形状を基にG−ジャン用にアレンジしたが為の形で同時期の11MWのバックポケットとは異なる雰囲気だ。
1960年代以降〜現在に見られるサイレントWよりも鋭角でシャープな印象を受けるが時代が下ると共にその形状の極端さはなくなり、ある意味落ち着いてゆく。

従来の11MJ、111J(以後ファースト)とこのプロトとの違いはポケットが配置されている場所が、やや上部にあると云う事とフラップを留めるボタンがスナップボタンではなくドット式の通常のボタン留めである事。
一般的なファーストに関わらず、スナップボタンの考案者とされるロデオ・ベンを初代デザイナーに持つラングラーではジャケット類の大半がスナップボタンを採用しているだけに、これは珍しく、よってスナップボタン採用前のより古い仕様だと云うのが容易く分かる。
胸の左右の開き部分には2本のプリーツが走りそれを留めるステッチが施されている。(総綿糸縫製の為、既にステッチは退色し切れかかっているが)
従来のファーストでは丸カンヌキと呼ばれるラングラーお得意の円形のバータックで縫い留められている。
丸カンヌキは40年代後半〜60年代にかけてブルーベル社の様々なブランド、ウエアに採用される事となる後の時代の伝統的なディティールだ。

ボタンはジーンズのトップボタンと同デザインの物を採用している。
これもジーンズ同様、長期間ほぼ同じデザインが継続採用される事になる伝統的なパーツだ。
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