肩口。
ここも通常のファーストには見られないプロト特有のディティールが見られる。
それはアクションプリーツとゴムを装備していない事だ。
ラングラー初期のビンテージ・デニムジャケットでは代名詞的なディティールだがそれが採用前の更に古いモデルであるが故だ。
その為、生地を巻き込んでのダブルステッチ製法と云う他社と大差ない、極めてオーソドクスな仕様になっている。
アジャスターストラップ。
主にファーストと呼ばれるビンテージラングラーでも初期のモデルにしか採用されていないウエスト調整バンド。
デニムジャケットとしては珍しいディティールだが上記のアクションプリーツの件もそうだが、デニム以外の衣類では見受けられるがデニムでは使われてない要素を取り入れるのが初期ラングラーデニムの特徴でもある。

セルビッジ。
フロント開きの部分に生地端が露出している。
当然、ミミ付のビンテージデニムだがオレンジミミではない、折り曲げた生地を留める為のステッチがそう見えるだけで実質は白ミミでしょうか?
退色してしまったのかリーバイス等のように赤ミミだったのかは不明。
ブランドラベル跡。
残念ながら横長の天然皮革パッチは欠損してます。
縫製跡から、40年代から50年代初期までしか採用されなかった横長でジーンズの物とほぼ同様のタイプであった事が確認出来ます。
これもジーンズ同様に剥がれ易い為、着込まれたビンテージでは残っている可能性は低い。
デザインは内巻きロープロゴのタイプが使われたであろう。
やはりビンテージデニムの色落ちは美しい。
この素晴らしさこそが現在のデニム文化の源流の一つだ。
自然でシャープな縦落ち、綿糸のホツレと退色、これらは半世紀後の日本で評価を得て、その後のビンテージブームやビンテージレプリカ、デニムの洗い加工と云う現代のデニム文化に繋がる。

ワークウエアとして誕生したデニムとり意外な結末ではあるがワークウエアとしての丈夫さが時間の経過の中で存在し続けられた原因であり結果として魅力になっている。
かなりダメージはあるが色落ちに関しては申し分ない様子を見せてくれる。
アームのアタリはワークとして実用された結果故だろう、巻き縫いの強固さもここまで解体する事無く現存し続けられた要因の一つ。
*注
品番の11MJは、ジーンズ同様に11oz Men's jacketの略で以後に登場したジッパーモデルが11MJZであるようにボタンでの前開きモデルには〜Bの品番は付かない。

一般的には「ラングラーは1947年に最初のジーンズとジャケットを販売した」とされるが、ジーンズのようなアーキュエイトを施されたタイプが存在しない事からジャケットは1年遅れで販売された、と考えるのが正しいようだ。

ビンテージブームの際に「ラングラーではメンズより先にキッズを試験的に展開していた」と云う説もあったがその根拠とされるのは胸ポケットにサイレントWではなく、横に2本、平行に縫われたステッチがあるラングラーのキッズモデルがあるから〜とされるが、それらは全て50年代以降の111MJ、11MJZのボーイズモデルで立証する証拠にはならない、むしろ誤りであった。
ただしブルーベル社自体は1940年代前半ラングラー誕生前にもラングラーネームではないブルーベルのブランドネームでデニム製品を幾つか販売していて、その中には11MJと酷似したデニムジャケットがメンズ、キッズ共に存在する。
その中には、このプロト11MJとほぼ同デザインでブルーベル・ネームのデニムジャケットが存在しており、「ラングラー以前の商品」あるいは「同時期に別ネーム」で販売されていたと推測出来る。
よって、この基本デザイン誕生時期は現在思われているより更に古い可能性もある。
プロト11MJをロデオ・ベンがデザイナー就任前のモデルとする説の根拠は「アクションプリーツ、スナップボタン、丸カンヌキ」がないからだがそういった推測と一致する。

プロトとこれも呼ばれるが現存する数やサイズ、それに使用状態からある程度は生産販売されていたと推測出来るがジーンズよりも、こちらの方が少ないように思える。
従来の11MJとプロトの中間期に位置する過渡期モデルも数種類存在する。
その一つはアクションプリーツ未装備、スナップボタン未装備だが丸カンヌキ仕様、合皮ラベル仕様と云う仕様になっている。



【購買手記】
ジーンズ同様に、このジャケットのプロトもビンテージ市場では超レアですね、先ず売ってないし、あっても30万円以上の高額か非売品扱いだ。
ただし、全く存在しない訳でもないようで過去、数回程、販売されている現場を確認している。
でこのプロトはそんな中でもショップ自体が通常のファーストとプロトとの違いを分かっておらずプロトとしては「超安値」で販売されていた。
風邪により朦朧としながらもマイサイズである事を確認するとレジに直行したのは云うまでもない・・数年前の某三河地方の古着屋の出来事でした。
尚、「超安値」と云ってもそれはプロトとしては、であって一般的な感覚では「衣類の値段とは思えない、約8万円程の超高値」なのが微妙なところです。
又これとは別の体験でほぼワンウオッシュ状態のプロト11MJ〜11MJ移行期モデルが約30万円越えで某古着屋で販売されていた。
何年も店頭にあり続けていた安心感と高額故に買い渋っていたら買われてしまった経験がある。
非常に残念な思いをしたが実はプロトそのものと同等に移行時期の11MJもかなり希少だ。
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