首裏。
クロスパッチを縫い留める紺色のステッチが確認出来る、パッチが欠損していてもステッチのラインの形状で50年代前期か後期か容易く識別出来る。
又、同時にゴムを留める縫製も下に確認出来る。

袖口はこれもスナップボタンを採用、以後のモデルにも継承される伝統の仕様だ。
ヴィンテージの特徴としてスクラッチレスリベットで開閉箇所の割れ目を補強している。
袖裏の縫製。
ヴィンテージならではの特徴としてチェーンステッチの縫製で内側の個所が袖口パーツより外れ内側に外れている。
1960年代までは見られる仕様だ、ラングラージャパン時代の初期復刻等では再現されていない。
各部ディティール。
肩口にはアクションプリーツと呼ばれるスリットがあり肩付近の動きをよりスムーズにしている。
又、裏返すとゴムが貼り付けられているいるのが確認出来る。
他社よりもタイトなシルエットでありながら動きの悪さを感じさせないラングラーの秘密はこう云った所にある。
そして補強ステッチ。
ダブルステッチで強度充分でありながら何故か1950〜60年代のジャケットの多くにはこのような補強ステッチが後から追加されているケースがある。
主に肩や胴体、肘付近等で必ずしもある訳ではないし、あっても場所に統一性はなく、ジャケット本体の完成後に施されている。
無い物も多いので別段、値段や年代判定には関係ないが気になるところだ。
尚1960〜70年代の場合、外側からは確認出来ない補強ステッチで二本針ミシンで縫いきる際に生地が浮かないようあらかじめ仮縫いしていると思われるものを見かけるがそれと同様の目的であるのかは不明。
アジャスターストラップ。
”ファースト”と呼ばれる初期ヴィンテージにしか採用されていないウエスト調整機構で背面、腰下部に位置する。
デニム以外のジャケットに見られる仕様と機能的にはほぼ同じで、シンチやボタンによる調整よりも使勝手が良いが以後の年代には11MJZに採用されているゴムによる自動調整機能やリーバイスと同じボタン式のストラップが採用される、つまりは消滅するディティールだ。
スクラッチレスリベットの裏側(凸側は同時代の11MWZ同様UFO型リベットを採用している。


*注
補強ステッチは比率的にはブランケットをインナーに貼り付けたライナー付モデルの方が多いようだが古いデニムジャケツトでは通常の物でもこのように稀に見られる。
ラングラー、マーベリック、ビッグベン、ブルーベル等の同一メーカー内の兄弟ブランドでも同じような傾向があるが他社のジャケットでも見られる。
その目的は強度を増す為の追加縫製か、縫製ミスを防ぐ為の仮縫いでは?と推測出来る。
只、仮縫いにしてはボディー前後を縫い止める両型、脇の下以外の他の生地を巻き込んでダブルステッチをされている箇所に全く見られない。
更にダブルステッチの中央を大きく反れている縫製や明らかにダブルステッチの上から縫い込まれている物もあり謎は多い。
これまでレプリカや復刻のジャケットではこのような仕様を再現する事はなかったので、ヴィンテージ・レプリカブランド”クッシュマン”がラングラータイプのジャケットを企画している際、プロデューサーの伊藤氏に助言した所、採用された経緯がある。
正しヴィンテージの大雑把な縫いっぷりと違い「やたら綺麗にダブルステッチの中央を縫っている」為、あまりらしさが出ておらず少し残念ではある。
理由は「縫製工にそこまで徹底させるのは難しい」との事、この他にもヴィンテージのディティールで幾つか助言しているがその時に聞いた話しでは「工場側が「何故そうするのか?」理解しきれないないので100%忠実に徹底しきれない」との事。
失われた仕様を今に蘇らせるのは簡単そうで意外と難しい。


*注
90年代の復刻・レプリカブーム期において販売された商品や雑誌、ムック本の紹介により、ラングラーの代表的なジャケットとして認知される事になった11MJ、初期型111MJら、俗にファーストと呼ばれるデザインですが、実際にはラングラーの歴史上ではブランド開始初期にのみ見られる短命のデザインである。


*注
デジカメでの撮影においてフラッシュの有無によりデニムの色合いが異なっていますが全て同一のジャケットの画像です。



【購買手記】
カード分割払いと云う悪魔の手法を得ると「我慢」と云う言葉をツイ忘却してしまう実例でしょうか。
適正価格で買っている為、実はプロト11MJより高い買い物だったと云う裏話もあります。
ヴィンテージラングラーを代表するジャケットなだけにラングラーマニアを目指す方には是非その良さをオリジナルで経験して欲しいものです。
高いと云ってもリーバイスのファーストよりは一般的には安い方だし。
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