Wrangler Prototype11MW(1940's)
ラングラーブランドがスタートして最初に販売されたジーンズであり以後、13MWZが登場するまで約20年間にわたりラングラーの代表的なモデルとして君臨したのが11MWだが、これはそのファーストモデルである11MW。
通称「プロト11MW」と呼ばれる極めてレアなビンテージジーンズで生産期間は1947年から長く見ても1948年の途中までと極めて短い期間とされる。
ラングラー最初のジーンズでありながら以後のラングラージーンズへと繋がる基本的な部分は既に完成されているが微妙に、このモデルにしか見られない特徴的な箇所が幾つかあり、それ故に”プロト”と呼ばれている。

先ず全体像をご覧にいただければお分かりのようにラングラーを象徴するディティールである7本ベルトループ(リーバイス等よりも背面に2本多く、馬上でもベルトの安定感を維持する)、両シームのダブルステッチ(インサイドシーム、アウトサイドシームが共に生地を巻き込んで巻き縫いされている)が誕生当時から採用されている。
1948年以降の11MWZが1950年代初頭にモデルチェンジする以前はラングラーにしてはややルーズ気味なシルエットであっただけに、それらとは異なり細めで精錬されたシルエットをしている。
更にバックポケットにはラングラーを象徴する飾りステッチ、サイレントWではなくリーバイスのアーキュエイト・ステッチと酷似した飾りステッチが施されている。

尚「細い、細い」と云われるラングラー11MW(11MWZ)だが実際にその脚は現在の標準では細めではなく、むしろ一般的なストレートかそれよりもやや太めの分類に属するだろう。
まだジーンズが一般的にはワークウエアでありサイジングにばらつきのある未防縮デニムが主流の当時(40〜50年代)の基準ではワークパンツ純然としている他社よりも細い方だが60年代以降、よりカジュアル化し脚が細めになっていくリーバイス等の他社とは、その比較が逆転してしまう。(つまりはそれほど時代の変化の影響を受ける事がない完成されたシルエットだと云える)
そもそも一般的にカウボーイ専用と云う観点からラングラーの各モデルはウエスタンブーツが納まり易い用に、パイプドがかかった太目の脚が伝統であり21世紀を迎えた今日でも主流である。
素材は11オンス左綾デニム。
品番の11はそもそもデニムのオンスから来ているとされるが時代が進むとデニムのオンスは上昇し11オンスではなくなってしまう。
リーバイス等よりもオンスが低く、やや薄めに感じる生地感ですが10オンス以下の軽オンス類のシャツやジャケットと比べるとジーンズらしい厚みが充分感じられる。
縦落ちはご覧のように凄く「左綾らしい土砂降りのような縦落ち」と賞されるそのままの素晴らしさです。
フロント開きはボタンフライ。
「世界で初めてジッパーフライ・ジーンズ」を販売したとされるラングラーだがそれは11MWのジップモデル、11MWZでの事。
最初のジーンズはまだジッパーが採用されておらず同時代の他社ジーンズ同様にボタンフライ仕様だ。
以後カウボーイの要望(牛の角が引っ掛かり危険だから改善を要望したのが良く知られている説)を取り入れ実用的な目的からジッパーの採用に踏み切る事になる。
フライボタンはフラットでプレーンな形状をしており、3個と他社より少なめで、比翼部分を見るとホール部分がシングルステッチで三分割されている等、他社との違いが伺えます。
ジーンズのそれ、と云うよりもチノパン等のワークパンツ類に類似したディティールで、それは総合ワークウエア・メーカーであるブルーベルが母体であるが故でしょうか。
各種パーツ。
ジーンズの顔の一つであるトップボタン。
フラットで黄銅色の鉄製ボタン。
ブランドロゴが刻印されており、半世紀以上経過しか現在でも、ほぼ同じデザインの物が採用されている伝統のパーツだ。
スクラッチレスリベット。
ジーンズがジーンズたる由縁のパーツであり補強用に打たれたリベットだが突起部分が家具や馬具等を傷付けると云う弱点があった。
そんな弱点を克服したのがこのスクラッチレスリベット。
リベットの凹と凸を逆にした被せ式のリベットでやや丸みを帯びたフラットな表面は接触時ダメージを与えない。
リベット裏はUFO型とも云われる丸い段のある形状をしている。
これもラングラーを代表するパーツで、半世紀以上経過した21世紀においても、ほとんど変化なく採用されている。

縫製糸は全て綿糸の為、この状態では変色、ホツレをかなり起してます。
これもビンテージのアジと云えばそれまですが、直しが一部入っているもの、ここまで穿き込まれても現役で穿ける状態で丈夫さは凄いですね。

尚、このプロトには個体差がかなり見られ、センターベルトループの取り付け位置や一部縫製個所などに違いが見られる。
最初期故の不安定さ、試行錯誤ぶりが伺える。
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